
- 昨年の化学誌に、アメリカの学会誌に投稿したら査読者から何のかんのといちゃもんがつき、対応している内にその雑誌にその査読者の同様の論文が掲載された。調べてみると日本の投稿者よりずっと遅れて受け付けているのにもかかわらず、異常な早さで掲載になった。内容が盗まれている可能性が高いといった話を見た。またかと思う。学者の世界はまさにお江戸である。生き馬の目を抜く世界である。
- 私は学生の時によく似た事件を体験した。ある日実験室にある有名大学の先生方が見学においでになった。私のところだけでなくその学科全部をご覧になったと聞いた。さて卒研発表を間近に控えた日、学会誌にその大学から同じようなテーマの発表があったのである。対象が少し違っていただけである。見学に来た人たちから、その人達が類似の研究をしているとは聞いていなかった。同じ事件が隣の実験室でも起こっていた。隣では結局教授が先方の口頭研究発表現場まで出かけて確認したらしい。口頭発表以後先方は沈黙した。やがて学会から姿を見かけなくなったと記憶する。学会誌に載ったのは隣だけだった。もう時効の話なので一度先生に真相を聞いてみようと思う。
- 私どもがやられた時代は、学者は清貧に甘んじる高潔な人種という信仰がまだ生きていた時代で、私の学者観を一変させた事件であった。無防備で盗られる方が悪い時代の入り口だった。年取ってから工業所有権法の勉強の真似事をやったが、知的所有権の知識は先進国化するほど重要と思われる。まだわが校にはまとまった講義はない。他の理工系の諸校ではどうなっているのでしょう。
('95/05/15)