七月要約

原油高騰に引きずられて世界は同時インフレに入った。7/4読売は各国の消費者物価指数の推移図を載せた。ベトナムが26-7%とダントツで、インド、中国が7%台、アメリカ、EUは4%台、日本は1%台という。我が国では価格転嫁の足取りが鈍いが、いずれは欧米の水準あるいはそれ以上に上昇するのではないかと心配である。7/25総務省は6月の全国消費者物価指数が前年同月に比し1.9%上昇したと発表した。2005年に対し2.0%の上昇である。7/15全国20万隻の漁船が一斉に休漁した。燃料高により漁業が採算不能になった事態のアピールのためという。早速与党・政府から漁船燃料補助金支出案が出た。漁民だけが対象では不公平きわまる。赤字財政立て直しと逆方向になる。
7/4読売によると、年金積立金の運用利回りが昨年度は-6%(-5兆円)だった。サブプライムの直撃による。我が国の年金は比較的安全な運用であったはず。一時期議論されたような国富ファンド的積極運用をしておれば、はるかに大きな損害を被っていたであろう。株価下落が12日間続いた。
大分の教員採用、昇進に関する賄賂問題に警察の手が入った。毎年合格者41名中15名が不正採用だった。その後約半数に拡大。口利き議員枠があったと関係者が証言した。教育長は口利き者に発表前に「報告」していた。この教育長は不正合格教員全員解雇を宣言したが、実行できるかどうか疑問視される。「口利き」「発表前報告」ほか何らかの圧力疑惑の対象はその後も拡大し続け、地元大学、地方新聞社にまで及んでいる。7/24読売に、教職の地方学閥化を根本問題とする指摘が、教職出身参議院議員から出た。大分に限らず合格枠の私権化についての噂は我が千葉県も含め全国的に存在する。社会保険庁改組にともない、労組ヤミ専従者とそれを認めていた管理職員を再雇用しない方針が出されている。文科省幹部が情報漏洩による収賄で懲戒免職処分を受けた。
7/26読売夕刊に「さまよえる博士」の記事がトップに出た。アルバイトを入れなくてもまだ4人に1人の割で無職だそうだ。特に文系にひどいという。進学時に社会のニーズが少ないことは判っていたはずだ。この事態は自己責任分が大きい。大学院が新制で出来たとき、積極的に進学を学生に勧めた京大のような例はあるが、社会では大学で就職にあぶれたか就職意欲を欠いたものの救済院という評価が支配的であった。今は、博士課程は、修士課程で就職にあぶれたものの進むコースと言う受け止め方になっているのではないか。本当に博士の実力があるのなら、日本国内企業あるいは学校への就職に拘らず海外に雄飛してみせよ。7/28の読売に公立高校普通科の地域制が撤廃方向で進んでいることが報告された。私は中学校時代に地域制となり級友学友が四散し、旧制以来の伝統もともに喪失するのを見た。60年前の地域制化が「古き伝統の破壊」という占領政策の一環であったことは間違いないが、それが直接命令でなされたのかそれとも教育官僚の迎合であったのか、実際のメリット・デメリットとともに今総括する時期に来ている。
7/13の読売は原子力燃料再処理工場の完成遅れを取り上げた。'87年にフランスより主行程につき技術導入し、さらに英独からもよいとこ取りの技術導入を果たした。技術導入前には原燃の長年にわたる基礎およびベンチスケールの中規模工業化研究がある。'97年末の完成予定だったのが、未だに試験運転すら終了しない。文面からは模擬燃料段階は終わり実廃核燃料による試験と想像される。同紙夕刊にヒートアイランド現象が解析され、2000年時点で東京は正味2℃弱の上昇という。全国最高値。千葉も1.4℃以上。天然の気温上昇率はこの100年で0.67℃という。
素粒子ニュートリノに質量があることを発見した東京大特別栄誉教授・戸塚洋二氏ががんのため死去した。日本語研究の学習院大名誉教授・大野晋氏は心不全で亡くなられた。トルネード投法で一世を風靡した野茂投手が引退した。アメリカ大リーグへの道を付けた最初の日本人選手として、日米双方のマスコミに賞賛の記事が出た。メジャーリーグで123勝を挙げた。イチローが3000安打を達成した。アメリカに渡ってからの安打が全体の6割弱、1試合あたりの安打数はアメリカでの方が高い。野茂、イチローとも出身はパ・リーグの在阪不人気球団だった。それがハングリー精神を掻き立てたか。人気のセ・リーグ出身であるゴジラ、福留は彼らを超えることが出来るだろうか。
技能の保存発展伝承を考える番組が増えた。7/22 NHK総合「プロフェッショナル仕事の流儀」では板金術を、読売のシリーズ「日本の知力」の7/23には宮大工の仕事、日本刀製作法が取り上げられた。他にまねの出来ない技を今日に伝えた「徒弟制度」とか「家元制度」とか、それを「体で覚える」とか「技を盗む」とかは前近代的で、搾取労働の基幹だとマスコミが攻撃の対象にしていた時代があったが、発展途上国の追い上げにあって、もの作り王国が揺らぎだし、日本の伝統を再認識しようとしている。要は長所と欠点は表裏の関係だと言うことだ。ただ、マスコミの叩き過ぎも影響したのであろう、後継者不足になりがちになった伝統技能の維持展開のために、今何をすべきかという肝心の提案が彼らの口から出てこない。答えは簡単で、評価を高める仕組みを作れと言うことだ。何かその点になると口ごもっているのは、文系社会の欠陥を示しているように思える。
同じ時期に新聞記事になったが、「近代的」雇用制度に移転した結果非正規雇用の増大、能力主義・成果主義による所得格差増大が今反省材料になって「前近代的」日本型雇用制度が見直されている話だ。高校卒業の時に国語のおばあちゃん先生が「隣の花は赤い」と書いた寄せ書きを貰った。制度をいじくるときは、失うものの大きさをしっかり見据えて動かねばならない。7/31読売に、「日本人の勤勉」は過去のものとなりつつあることを示す世論調査結果が示された。これが(所得の低い)若年層に著しい。我々世代が、日本を先進国水準に引き揚げた最大の武器である。今、先進国中で我が国が最も成長率が低いのも労働意欲の低下と強く結びついているのであろう。アメリカでは大卒以上と高卒との所得比が2.2倍なのに、日本では1.4倍程度だ。女性賃金はアメリカでは信じられぬほどに男性と差がある。低所得層は、格差に気を取られるあまり、勤労意欲を減失してはならない。日本は低所得者層にきわめて優しい国なのだ。マスコミは弱者救済ばかりを話題にせずに、耳に痛くとも、かっての先進国での位置を回復するためのキャンペーンを張るべきである。それが結局は弱者救済と同義になる。
7/24零時半頃岩手県沿岸北部にM6.8の地震があった。死者はなかった。7/28神戸と金沢で鉄砲水による水難事故が発生した。夏の集中豪雨により突然川が増水し、川原で遊んでいた主に子供が水に飲み込まれた。
フィリッピンでの海老養殖事業と称して850億円を集め、海外逃亡しようとした男の捜査が進んだ。中国産ウナギを三河一色産と詐称した事件、四万十川産とした事件、米沢牛詐称事件etc、etc。もはや一部の悪徳業者だけとは言い切れない。低すぎるモラルに呆れる。
無差別2名女性殺傷事件が八王子駅内ビルの書店で起きた。大量無差別死傷の秋葉原事件以来1月半だ。世の中面白くないから、気晴らしに誰でもよいから殺してみたかったという犯人(33歳男子、非正規労働者)の言葉が紙面に踊る。
中学指導要領に竹島が記載される。固有領土の表現は避けたとある。韓国では中学校教科書に固有領土と記載されている。何度もこのHPにも出てくるが、韓国が日本領土の標識を引き抜き、島の天然岩に韓国領の文字を彫り込んだ島だ。国連での話し合いを頭から拒否した。歴史文献は日本領支持のものばかりで韓国領を示唆するものは無いという。公式には所属は未解決の地帯になっている。ところが日本の調査を拒否しながら、竹島近海の海底調査を韓国は独自に実施し、国連に対する実質領有実績主張理由に加えている。日本が自国民に日本の主張を教えることに、韓国は抗議し大使を召還した。書名になったとおり、韓国人とは「つきあいきれない」と思う。BSEアメリカ牛問題で支持率を落とした李大統領としては、対日強硬姿勢を打ち出さざるを得ないと解説されている。アメリカ政府機関「地名委員会」が竹島を「韓国領」から「主権未確定」に変更した。月末にそれを撤回し元の韓国領に戻した。米韓大統領会議への政治的配慮とか。韓国首相は竹島を訪問した。無人島だったが、今は人を住まわせている。
G8の洞爺湖サミットで、アメリカが大幅に譲歩し、'50年炭酸ガス半減を中印を含む世界の共通目標として努力することとなった。サミットに招かれた中、印、ブラジル、メキシコ、南アフリカの5首脳は先進国に'50年80-95%の削減を求めた。G8は中期目標数値を出さなかったが、新興5ヶ国は20年までに先進国に25-40%の削減を求めた。彼ら自身の目標には一切触れていない。原油・食料高に強い懸念を表明し、拉致に初めて触れた。最終日7/9の主要排出国会議では新興国も温室ガス抑制に取り組むことを明記した宣言を発表した。世界の排出量割合は先進国が50%、新興国が30%、未参加国分が20%になっている。温暖化がもたらす被害は防護策に手が回らぬ新興国の方が深刻になる。インドネシアの津波による沿岸の被害、ミヤンマーのサイクロン被害、エベレスト山系氷河喪失などから予想される打撃は新興国にとって緊急の大問題であるはずだが、相変わらず先進国の責任と言う主張で済まそうとしていた。だが、北朝鮮問題同様に、排出量抑制問題に最高首脳が出席する枠組みが出来たのは成果であった。
日本提案のセクター別削減目標取り組み案に賛同が多かった。地球システムが変革期に入ったことを実感した。福田首相は議長としてよく働いた。これが小沢・影の内閣首相であったら、あそこまでやれたかどうかちょっと考えさせられた。前原副代表が盛んに現実論を前に出している。私は八方美人型政治家には不安なのである。7/10読売にカナダ・トロント大「G8研究グル−プ」が福田首相に「A」評定を出したと書いていた。7/13 NHK調査では福田内閣支持率が4%回復し、30%となったという。毎日は22%、読売は27%で、微増横這いという表現であった。調査機関によりいつも系統差がある。拉致被害者家族は不満いっぱいであった。彼らの発言を聞いていると、日本首相は拉致以外は一切後回しでいいと受け取れる主張のように思う。北朝鮮の非核化は直接我々の生命に関係する最重要案件だ。アンバランスが過ぎると、かえって彼らが頼みとする日本国民の支持を遠のかせる。TV局は一方的意見だけを露出させすぎだ。
WTO多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は不調に終わった。アメリカと中印との対立が解けなかったため。今後当分は各国は2国間貿易協定に力を注ぐしかない。輸出漸減傾向にある日本としては、議長案(高関税農産品10%強→4~6%)を飲んでも自由化を成立させる考えであったという。
7/8、7/9 NHKクローズアップ現代は「変わる“世界の工場”中国(1)外資の選別が始まった」と「(2)日本企業 迫られる選択」を放映した。前者は外資優遇策をハイテク産業に絞り、従来のアパレルなどの労働集約型産業には技術転移と内陸部への移転を促すものだ。後者ではベトナム、ラオスなどへの工場分散や中国内陸部調査の結果などが報告された。労働者賃金は月給で、上海120ドル、ベトナム80ドル、ラオス50ドルという。ベトナムではインフレに見合う賃金確保のためのストライキ風景が印象的であった。ラオスでは居着かぬ労働力への対策が問題らしかった。中国内陸部での賃金は未熟練労働者では低いが熟練労働者では上海と変わらず(200ドルほど)、河川物流体制の不安定、周辺産業の不在など経済的に問題が多いようであった。
NHK SP インドの衝撃シリーズを見た。7/20は「第1回 “貧困層”を狙え〜過熱する超低価格ビジネス〜」では、年収17万円クラスの農村貧困層に、10%台の収入増加を与えながら事業規模を急拡大する企業の実体を捉えていた。ユニリーバの超安値石けん、仲買排除で農作物購入価格を高く設定した総合商社である。石けん売りは現地農村女性で、血縁・地縁ねらいなど日本の生命保険のセールス・ウーマンを連想させる。商社のやり口は農協そっくりだ。6月のSPではバングラデシュの貧困層の自立を取材していた。政府などあてにしない彼ら貧困層のたくましい自立精神に、何かあるとばらまきを求める我が農漁民のひ弱さを感じた。
7/21 「第2回 上陸 インド流ビジネス〜日本を狙う“製薬大国”〜」では、後発医薬品(ジェネリック)を武器に急成長(年30%)するインド製薬会社に焦点を当てた。新薬の研究開発には大変な資金、頭脳力、時間が必要だ。彼らはそれを避け、特許期限切れの効能保証済みの薬を新しい合成法で安く作る。米国で1錠が60円の品を彼らは18円で作る。大阪の日本第6位の製薬会社共和薬品が彼らに買収された。送り込まれた経営陣の妥協を許さぬ厳しい経営手段をレポートした。彼らは幼いときからディベード法をたたき込まれる。我が国にそれが通用するか、みものである。とはいえ、厚労省のジェネリック奨励策に乗って共和はいいスタートを切った。7/27 「第3回 “世界の頭脳” 印僑パワーを呼び戻せ」では、海外2500万人の印橋が輩出する成功者群と彼らを結ぶネットワーク、祖国発展に対する熱い思いが印象的であった。アメリカの億万長者の10%が人口比率が0.5%という印橋であることは、彼らの優秀性を物語る。もっとも過去にユダヤ人も、華僑もそう評価されたことを思い出す。日出ずる国・日本であった時代には我々もそう評価されたのではなかったか。

('08/07/31)