長生郡長生村

「ながいき村 落花生オーナーズクラブ」の種まきイベントに参加した。長生は地名としては音読みの「ちょうせい」だが、ちょっとひねって訓読みの「ながいき」に代え、より目出度い印象の言葉にして、農業体験プロジェクトの題名に持ち込んだ。オーナー制の体験プロジェクトは、旅行会社が連れて行ってくれる、その場限りのイチゴ狩りとか梨狩りと違って、関わり合いの時間が長い一種の農業投資だから、自ずと農業が身近に感じられるようになる点がいい。都会の子供の教育番組に好適である。昨年は枝豆オーナーになって、君津の農場で収穫に6時間ほど働いた。翌日翌々日と2日間ほど足腰が重くて参った。リンゴ一枝オーナー(青森や長野)とか葡萄農園オーナー(山梨、長野。これは何年か後に葡萄酒として収穫できる。)もやっている。産品は試算するまでもなく市場で商品として買うよりも割高だが、プラス・アルファを求めて損な投資を敢えてやる。
我が家から一般道路で1時間ほどの位置にある。早出したので時間に余裕があった。近所の尼ヶ台総合公園に出向く。野球場で少年野球が行われていた。事務棟があり、そこで園内の湿生植物園に関するパンフレット「湿地の自然」を貰った。かってここらには低湿地や大小の沼地が広がっていたという。湿地特有の植物や食虫植物が自生していた。食虫植物についてはTVで紹介されたことがあったと思う。でも干拓で次々に群落は失われ、今は保護活動をやらないと絶滅しそうだという。パンフにはモウセンゴケとコモウセンゴケが開花期に入っているとあった。この植物園をひとわたり見て歩いたのだが、どこを見れば見つかるのか結局見過ごしてしまった。次回の訪問は7月と決まっている。まだこれらの花はあるようだし、その他の食虫植物も花を開くと書いてあるから、その時にしっかり見よう。ザリガニ釣りを何人もがやっていた。ヨシ、カヤツリグサ科の草が繁茂する飛び石のあるあたりだ。釣り糸を垂らすとザリガニがたちまちに食いついて来て、面白いように釣れる。これに飽きた連中はヨシの原が消えて水面が見える沼地で魚釣り。ここでも糸を垂れたとたんに何かが釣り上がってくる。ブルーギルだと子供はいう。外来種だから誰かが放ったのだろう。少し先の寂しい位置にツリ禁止の立て札を1本見た。カモとシラサギを見た。
公園だけでなくあちこちにスイカズラの花を見る。このあたりの民家の生け垣はほとんどがイヌマキで所々にサツキあるいはツバキが見える。ブロック塀などないのがいい。その生け垣にもスイカズラが取り付いて白い特徴のある花を付けている。結構大きくなったヒノキ科の樹木にも頂点近くにまで蔓を伸ばしている。この花は日が経つと黄変する。黄色くなった花はほとんど見かけなかった。スイカズラとイヌマキがこの地域の特徴である。他に見た花としては樹木ではウツギ、ハコネウツギ、イヌツゲ、ツツジ、サツキ、草ではアザミ、ニワゼキショウぐらいを記憶している。風がさわやかで、公園近くの直売所で買った弁当を開けるのに好適であった。
保健センターで式典と説明会が行われた。駐車場を北西から取り囲む役場、保健所の建物はなかなか立派である。冒頭の挨拶に立った村長さんの話では、長生村の人口はほぼ1.2万、その内新住民が7割を占めるという。全国的に、村落地域では人口減少に歯止めがかからない中で、珍しくも長生村は人口増加が進んでいる。長生郡で市町村大合併の話が出たとき、住民投票で昔通りの村でやっていくことに決まったそうだ。活性維持にはいろいろ工夫が要るのであろう。このオーナーズクラブの企画も多分その一つなのであろう。クラブ会員は100口ほど、その日に集まったのは300人程だった。子供も結構いた。直売所の出張販売もやっていた。家内によると町中のスーパーと比べて同じか少し高い程度の値段であったという。でも新鮮だろうし、熟れてから収穫したものだし、ご祝儀気分も手伝ってそこそこの買い物をしていたようだ。
種まきはすぐに終わった。畝に、両端近くに2列に直径5cm程度の穴が空いた黒いビニールシートが、長さ方向に敷いてある。黒色は地面を暖めるためだろう。その穴から深さ3cm程度の位置に、落花生の種を横向きに寝かせ、土を被せるだけ。オーナーの1口当たり畝の割り当てが8mで、穴の間隔は30cmほどだから種の数は52個だ。一帯が砂地で落花生には適切な畑地だそうだ。そのためもあろう千葉は落花生の大産地である。最近ゆで豆用の大粒の落花生が開発されたが、我々が食っているのはやはり千葉県開発の多産うま味型のヤツだそうだ。台湾で食った落花生は豆の薄皮が真っ黒だったし、最近同じ台湾からの輸入品に、茶と黒が縞模様を作る皮を付けた落花生があることを発見した。味はあまり変わらなかった。いろいろあるのだ。落花生は尖った方から根が出るので、その方向に縦に植えるのがいいそうだが、どの種でも先端が区別できるわけではないので、私は全部横に寝かせておいた。ビニールシートの幕を突き破って、雑草の芽が出ている。私の植えた種の芽が運悪く斜交いに延びても楽々とシートを突き破って出てくるだろう。何とも素人向きの農業だと安心した。種は殻を剥いてある。
自家受粉してから子房柄が地面にまで降り、さらに地中に延びて殻を作りその中に実を作るのが落花生である。次回のイベントは花が咲く時期で草取りを行うそうだ。花は早朝に咲いてすぐ萎むとある。マメ科の植物では一般に空中で実り、鞘がいずれはじけて実が地上に散布される。鞘ごと落ちても鞘は柔らかいから芽が突き破るのに苦労は要らぬ。でも落花生の地中の実は頑丈な殻に包まれているから大変だ。農家は殻を剥いで植えてくれる。でも自然ではどうなっているのだろう。種まき指導員に殻付きで植えるとどうなるかと聞いたが、答えをよく聞き取れなかった。戻ってからインターネットで同じような疑問を持ち実験した人を何人か見つけた。発芽率は少し低く、殻なしの種の場合よりは遅れるが、チャンと発芽するという。ジャガイモのイモは地下栄養貯蔵茎のはずだ。ジャガイモの種はどうなっているか。ちょっと気になって調べた。今花が咲いている時期で、放っておくと小さいトマト様の実がつくと書いてあった。トマト、ナス、ジャガイモは種としては親類関係にあるそうだ。
種まきのあとバスで10分ほどのビニールハウス内のトマトの収穫体験に連れて行って貰った。我々は主催者に渡された小さいビニール袋にいっぱい赤いトマトを詰めて満足だったが、なかにはルール違反で別のいれものを持ち込み、それにいっぱい収穫しているヤツがいた。いじましい別種の人間を見ているようでイヤだったが、もう皆知って知らぬふりである。
4時過ぎに解散。また小1時間をかけて我が家に車を走らせる。「道の駅ながら」でもう店は終わりかけだったが、買い物がないか家内は目を走らせていた。ホケキョの声を聞いた。戻ってからタイサンボクが白い大柄の花を付けたのに気がついた。近くの桜の木にオナガの一団がグエーグエーと声を挙げていた。近くのカラスを警戒しているのか。サクランボを啄んでいる。

('08/06/09)