
- そろそろ卒研生募集のシーズンである。これまでは研究内容の分かりやすい説明程度だったが、研究だけに人が集まるのかとふと疑問を感じたので一言二言継ぎ足してみた。「研究ばかりではない。人生まるごと相談室として迷答もでます。募集何名。先着順。」配属希望は大抵は研究室の雰囲気から決まる。好男子で若く溌刺としている先生は女子学生に人気がある。世間の甘辛が分かってさぼってもいっこうに厳しくない先生は男子学生の好い標的である。「タコ部屋と化した論文製造研究室」には当世人は集まらぬ。しかし私の講義は配属以後の高学年が対象なので私の人格はあまりこの学年には知られていない。
- 広告を出したらすぐ女子学生の訪問を受けた。間髪を入れず何人も一団となってやってきた。まとめて来年の卒研生に採用せよという。先着順はまあゴロ合わせで、諸先生の都合など睨みつつ担当教官が配属を決めるのである。でも多分この先着順が利いたのであろう、学生は真面目正直に受けとめるから可愛い。お尋ね下さったのは嬉しいが、いくら何でもこう大人数を私の研究室で独り占めは出来ないよ。君らは仲良し何人組なんだろ。だったら隣り合わせの某先生と半分に分かれたら良いじゃないか。隣でも分かれたら別々の行動をせにゃならんじゃない。ここらまでは良かったが、だんだん相手の決心が露骨に表に出だした。一番ひょうきんそうなのが「これだけ美人がきたら先生両手両足に花ジャン」。真面目そうなのは「私らパソコンやれるんよ」。昔なら実験室にこんな子が志望してきたら涙がチョチョ切れた。私が甘党なのはもう情報収集されているらしい。「実験室はいつも飴玉豊富になるよ」。先生を飴で釣るとは恐れ入った。希望は承った、担当の先生が最後は決めるだろうが、申告は思いどうりしたらと逃げる。後でご一同のご成績を調べる。ご立派なご成績である。ただ下から数えた方が早いのが惜しい。
- ともかく自分の売り込みに積極的になってきた。事実は事実として受けとめアッケラカンとして自分を売り込む。これからの時代を暗示するような経験だった。たまたま女子学生であったためかも知れぬが、今日一日何となく幸福であった。
('95/01/29)