- 素材の味を残そうと思えば、薄味にせねばならない。だが薄味では料理の腕がごまかしの利かぬ姿であらわれるので、料理人に取っては一瞬も気が抜けぬ真剣勝負の場になるだろう。比色分析が有効な領域はランバート・ベールの法則から鈍感な方向に外れる高濃度域でないのと同じである。

- 関東に出てきた今はさる何十年の昔、私はここの伝統の地味がなんとも濃いのにびっくりした。最初は人形町のさる料亭のランチサービスの長い行列の結果である。それからもチョイチョイびっくらこいている。江戸前はそれでも食えるが、もっと離れて東北に出ると塩加減一本に近い名物料理があってまた驚かされた。秋田の「しょっつる」である。現在は薄味の良さが浸透し、また食塩摂取量と血圧の関係など詳しく調べられ健康管理上からも推進されてだんだん日本食が薄味型になって行くのは好ましい傾向と思う。味を化粧に置き換えたら薄化粧の勧めだな。化粧とは肌の持ち味を強調するためであって、人工的なたらしこみの肌を創作するためのものではない。しわが増えるたびに肌が輝きを増すような人生を送れ。
- 今日は「国際」と名が付くホテルで昼食を取ったのに、またまた砂糖と塩の塊のような和食であったので、転んでもただでは起きない精神で、化粧品の講義に使う小話の創作にこの和食を使ってみた。もっと旨い話にならんかな、諸兄のお知恵を拝借したい。
('94/10/29)