
- 学会からの帰り道志賀島に遊ぶ。国民休暇村の資料館にあった絵詞の写真を見て感心した。蒙古軍船の漕ぎ手が筋骨逞しい鬼面の兵士の叩く軍鼓とどらに合わせて必死に漕いでいる。足に鎖はないが、戦いのさなかと言うのに無防備である。体格も貧弱で思いなしか情けなそうな顔つきである。これは映画「ベン・ハー」で彼が乗ったガレー船そのものの情景ではないか。ベン・ハーは奴隷としてローマの軍船を漕がされた。洋の東西で同じような手段が同じ目的に独立に現れることはままあるが、これもその類か。それともローマよりは時代の遅い大帝国元の駅伝制度がもたらした情報伝達システムの勝利か。
- そこまで思ってからふとフランス、アメリカ間で争われたエイズウィルス発見一番槍事件を思い出した。軍配はフランスに上ったと言う。フランスからの「好意」の培養株をアメリカ側が「間違えて」分離株と発表したという。「化学」などにちょくちょくわが国学者が同様の被害に会っていると言う記事にお目に掛かる。論文盗用、データ盗用という形で。知的所有権は情報管理を一つ間違うと九じんの功を一きに欠く結果に終わる。うっかり営業の人に本当の技術情報はやれんのですよ、売るためには口止めしてもバラバラとばらして行くんです、と聞いたことがある。長い間ソフト情報はハード商品のお添えものだったこの国では理系の人たちにこそ知的所有権の単位を必須として取得させねばならぬ。こんな議論は通用するのカナ。
('94/10/23)